大判例

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東京高等裁判所 昭和63年(行ケ)3号 判決

一 請求の原因一及び二の事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決取消事由について検討する。

1 本願商標を構成する「POWERGUN」という語が、特定の意味を持つ成語とは言えないことは審決の認めるところであり、被告もこれを争つていない。しかし、その前半の「POWER」及び後半の「GUN」は後述のとおり相当多数の国民に知られている英語の単語であるから、「POWERGUN」は相当多数の国民から「POWER」と「GUN」の二つの単語を接続した合成語と理解されることが明らかである。そこで、本願商標の表示の意味を明らかにするために、「POWER」及び「GUN」のそれぞれの単語の意味について次に検討する。

2 「POWER」という単語は、広く一般公衆に知られている「パワー」、「マンパワー」、「ウーマンパワー」、「(自動車の)パワーブレーキ」、「(自動車の)パワーステアリング」、「パワーシヨベル」、「パワーポリテイツクス」等の外来語の中の「パワー」の語源としてであれ、あるいは直接英語そのものの知識としてであれ、力、動力、電力、権力等を意味する英単語として、相当多数の国民に知られている。また、機械器具を取り扱う業界において、Power Sprayer(動力噴霧器)、Power Cutter(動力カツター)、Power Shovel(動力シヨベル)の用語が使用されていることは原告の自認するところであり、原本の存在及び成立について争いのない乙第一号証の一ないし三によれば、power press(動力プレス)、power pump(動力ポンプ)、power brake(動力ブレーキ)の語が、広範機械用語辞典(株式会社機械協会発行)に登載されており、特にpower press及びpower pumpには、それぞれパワープレス、パワーポンプと、英語そのままの外来語も訳語とされていることが認められる。

したがつて、機械器具の普通名称を表す英語の前に「POWER」をつけた場合、機械器具を取り扱う業界に属する者はもとより、相当多数の国民も、「POWER」はその機械器具が手動でなく何らかの動力源により動くことを意味するものと理解すると見られる。

3 次に、「GUN」という単語は、一般公衆に知られている「ガンマン」、「ガンフアイト」、「マシンガン」、「シヨツトガン」等の外来語の中の「ガン」の語源としてであれ、あるいは直接英語そのものの知識としてであれ、銃またはピストルを意味する英単語として、相当多数の国民に知られている。また、機械器具を取り扱う業界において、スプレーガン、エアーガン、オイルガンの用語が使用されていることは原告の自認するところであり、原本の存在及び成立に争いのない乙第三号証の一ないし四及び乙第五号証の一、二によれば、商品カタログにおいてピストル型の接着剤押し出し器具が「グルーガン」、「glue gun」又は「ホツトメルトガン」と呼ばれ、使用法の説明の欄ではそれが単に「ガン」と称されている例のあることが、原本の存在及び成立に争いのない乙第四号証の一ないし三によれば、商品カタログにおいて、銃型の注油器具が「オイルガン」の普通名称で指称され、銃型のグリース注脂工具が「グリースガン」又は「ハンドグリースガン」の普通名称で指称されていることが、原本の存在及び成立に争いのない乙第六号証によれば、商品カタログにおいて、銃型の空気入れが「エアーガン」の普通名称で指称されていることが、それぞれ認められる。

したがつて、銃やピストルが一般に取引されることの少ない我が国においては、「GUN」という語は、機械器具を取り扱う業界に属する者はもとより、少なからぬ国民によつても、銃又はピストルそのものばかりではなく、銃又はピストル型で一端から何かを発射する機械器具を意味するものと理解されていると見て差し支えない。

4 そして、日曜大工用具のような身近な商品の中にも、電気ドリル、ポリツシヤー等ピストル型の動力付き手持ち工具がよく見受けられることは当事者間に争いがなく、本願商標の指定商品の中にはピストル(銃)型の動力付きのものがあることは原告の明らかに争わないところである。

5 以上の事実によれば、「POWERGUN」からなる本願商標をその指定商品の内、ピストル(銃)型の動力付き機械器具に使用するときは、その取引者である機械器具を取り扱う業界に属する者はもとより、最終需要者である一般国民のうち少なからぬ者がこれを「動力で作用するピストル(銃)型の機械器具」を意味するものと理解すると認められるから、本願商標はその指定商品の内、右の商品については単に商品の品質、形状を普通用いられる方法で表示するに過ぎないと認めるのが相当であり、これに反する原告の主張は理由がない。

したがつて、本願商標は商標法第三条第一項第三号に該当し登録することができないとした審決の判断は正当である。

6 原告は「POWER」又は「パワー」及び「GUN」又は「ガン」の語と他の単語の結合からなる商標が登録を認められていることを理由として審決の右判断は不当であると主張するが、いずれも本願商標とは別の商標についての事例であり、前記の判断を左右するものではない。

また、成立について争いのない甲第二号証によれば、原告は、本願商標と同一の商標につき、第一三類「くぎ、びよう、ステイプル、リベツト、その他本類に属する商品」を指定商品として商標登録出願をしたところ拒絶査定を受けたが、それに対する審判事件の審決において原告主張の理由により、右査定が取り消され、右の商標は登録すべきものとされたことが認められる。しかし、右の事実は、本願商標と同一の商標についてではあつても指定商品を異にする事案であるから、これをもつて、審決の判断の違法性の根拠とすることはできない。

更に、原告は本願商標と同一の商標が、フランス、イタリア及びベネルツクス諸国において登録を認められていると主張するが、外国で商標登録が認められたことをもつて、審決の前記判断が違法であることの根拠とすることはできない。

7 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は失当であり、審決にはこれを取消すべき違法の点はない。

三 よつて、本訴請求を棄却する。

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